『鳳仙花の花=一輝』説のあとも、氷河からのプレゼントの解釈をめぐって、意見は百出した。


■ 中国民話説

「中国の民話だと、鳳仙という仙人が、貧しい木こりに鳳仙花の種を与えたことになってるんだが」
「氷河が、霞を食べて生きる仙人になりたいと思ってるとでも?」
「ないな。それは」


■ 沖縄民謡説

「なあ、童謡なかったっけ? 鳳仙花の」
「沖縄の民謡にあったね。『てぃんさぐぬ花』だっけ。『鳳仙花の花は爪先に染めなさい。親の言う事は心に染めなさい』っていう歌」

「マザコン氷河らしいような気がしないでもないけど、その実、全く氷河らしくない歌だなー」
「同感だ」


■ 幼い頃の切ない思い出説

「鳳仙花にまつわる、ふたりだけの思い出でもあるんじゃないのか? 鳳仙花の花で一緒に爪を染めて遊んだとか。鳳仙花は、別名、爪紅花つまくれないばなとか爪紅つまべにとか言うはずだぞ」
「そんな女の子みたいな遊び、したことないよ。種を飛ばして遊んだことはあったけど、あれはみんなで遊んだよね」

「ああ、みんなでやったっけなー。いつだったか、氷河の飛ばした種が俺の鼻ん中に飛び込んじまったことがあってさぁ、めちゃくちゃ難儀した記憶があるぞ」
「んー……それも関係なさそうだね」
「なさそうだな」


■ ネタ切れ

「…………」
「…………」
「…………」



──所詮、氷河の意図を推し量ることなど、普通の人間にできることではなかった。







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