シュンは自分の姿がとても恐ろしく、ひどく醜いことを知っていました。 シュンが住んでいる森の奥にある小さな湖の透き通った水鏡が、残酷なまでに正直にその姿を映し出して、シュンに見せてくれるからです。 冬が来るたびに湖面は凍りつき、森の水鏡は白く濁って、シュンの姿を映しださなくなります。 けれど、春になると、湖面を覆う氷は解け、白い靄の晴れた水鏡は再び、シュンに新しい絶望を運んでくるのでした。 シュンは、1年の半分が白い雪に閉ざされるシベリアの森に住んでいました。 白い森に住む動物たちは短い夏を謳歌し、寒さの厳しい冬の間は、ひっそりとそれぞれの巣穴にこもって、春の訪れを心待ちにしながら、身を切るような寒さを耐えて過ごします。 シュンは、その森にただ一頭だけ生き残った灰色のシベリアオオカミの子供でした。 冬の寒さを耐えるために全身を覆う灰色の毛、獲物の命を貫き通す鋭い爪、獲物がたてるどんな小さな音も聞き逃さないように上を向いている耳、その耳の近くまで裂けている口、そして、エサになる小獲物の身体を噛み切る尖った牙。 シュンの身体は、そんなふうな残酷なものだけでできていました。 ですから、シュンはいつも、生きていることを辛いと思っていました。 他の小動物たちの命を奪わなければ、自らの命を保つことのできない自分自身を呪っていました。 他の生き物の命を奪うことなく生きていけたらどんなにいいだろうと、シュンはいつも夢見ていたのです。 シュンが一日生き永らえるということは、白い北の森から命が一つ消えるということでしたから。 |