自分の辛い運命を嘆いてばかりいたシュンは、けれど、やがて気付きました。
他の生き物の命を奪って生きているのは自分だけではないということに。
北の森に住む熊や狐や鳥たちも、みんな、シュンと同じ。
春には軽やかに花々の間を飛びまわる蝶たちでさえ、幼虫の頃には青々とした植物の葉を食い散らして、その美しい姿を手に入れるのです。

どうして神様は、この世界をそんなふうに作ったのでしょう。
シュンはいつも、それが不思議でした。
そして、悲しくてなりませんでした。

そんなふうな世界の中で、最も醜く、最も残酷な生き物。
それがオオカミでした。
それがシュンだったのです。

シュンの命の糧になる野ウサギや野ネズミたちだけでなく、狐や、あの大きな体躯を持った熊でさえ、シュンの姿を見ると、こそこそと森の奥へと逃げ出します。
同じオオカミの仲間のいない白い森で、シュンはいつもひとりぽっち。

自分が生まれてきた理由が、シュンにはわかりませんでした。
そして、生まれてきた理由もわからないのに、生き続けようとする自分の身体の足掻きが、シュンには理解できなかったのです。






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