401000カウント記念小説


401000カウントをGETしてくださったのは、amiさん。


お題は、

マイ・フェア・レディ


「氷河を教育する瞬ちゃんは想像できるのですが、瞬ちゃんを教育する氷河はあまり想像できません。氷河×瞬バージョンの『マイ・フェア・レディ』をぜひお願いいたします」

とのことでした。
amiさん、リクエストどうもありがとうございます!

メールをいただいて、最初に私が思ったことは、amiさんがおっしゃっている通り、
「瞬ちゃんに教えられるような何かを、はたして氷河は持っているのか!?」
でした。
「どう考えても、戦闘力、人間性 共に、氷河より瞬ちゃんの方が上でしょう!」
と、一抹の迷い、一瞬の逡巡もなく思ったのです。
そして、私の模索(苦悩とも言う)が始まりました。

私が考えた苦悩の断片をご披露しますと。

(1) 瞬ちゃんに冷凍技を教える氷河というのはどうだろう?
↑ これ以上、瞬ちゃんに強くなられては困るので却下。

(2) 氷河が瞬ちゃんにロシア語を教えるのはどうかなー。
↑ 私がロシア語を知らないので、話にならない(話を書けない)。

(3) いっそ、えっちの手管を教えるのはどうだ!?
↑ 清らかな私には無理(言ってみたかっただけです)。

──等々。

そして、最後に(開き直りで)行き着いたのが、今回の話。
これは、考えようによっては、『逆転の発想』ということになるかもしれません。
氷河のいちばんの苦手分野を、氷河が瞬に教える。
瞬ちゃんが『この世で最も清らか』という設定の持ち主だからこそ書けた話と言うこともできるかもしれません。

さて。
今回のお題の『マイ・フェア・レディ』は、上流階級の言葉やマナーを身につけることで、下町の花売り娘が自尊心を持った一人のレディになる話。
そして、教養やマナーは備えているけど、思い上がりが はなはだしく、階級意識の強かった傲慢な男性が、彼女の成長によって、自分の思いあがりに気付く話(と言っていいのかな?)。

ヒギンズ教授は、決して魅力的な男性でないわけではありませんけれど、色々と頑迷で、どうしてあの魅力的でリベラルなお母様から、こんな息子ができてしまったのかと、不思議に思えるようなひと。
いざとなると母親に泣きつくマザコンなのに、母親より 俗な社会から強い影響を受けてしまったのかもしれないですね。

『マイ・フェア・レディ』のラストは、(私には)少々納得のいかないところがあります。
ヒギンズ教授はイライザの憤りを完全に理解し、彼女への傲慢な振舞いを真摯に反省したわけではなく、ただ彼女を失うことを寂しがっているだけのような気がしないでもない。
まあ、人は、必ずしも完璧な人に恋するものではありませんから、すべてはこれからのイライザの教育次第なのでしょうが。
ヒギンズ教授はプライドの高い男性のようですから、そこをあまり刺激しないように、理屈で追い詰めすぎないように。
あの二人がもし結ばれるようなことになったとしたら、イライザは我儘な子供を育てる母親になるしかないような気もします。

ヒギンズ教授は、愛すべき人。でも、今ひとつ尊敬しきれない人。
そう考えれば、私の氷河像に似ていなくもないのですが、他人の人権を認めておらず、傲慢――という点で、決定的に違う。
ああいう傲慢で愚かな人に、氷河をなぞらえるのはちょっと……という ためらいが、今回の話の氷河を(ヒギンズ教授に比べれば)誠実でオトナな教師にさせたのかもです。
舞台は完全に日本なので、ちょっとイギリスの香りが入るようにした都合もありますが。

ちなみに、『マイ・フェア・レディ』で、私がいちばん好きなのは、競馬場の行け行けシーンではなく、大使館のパーティでの大成功シーンでもなく、『The rain in Spain stays mainly in the plain』で、初めて教授に褒められてたイライザが有頂天になっているシーンです。
『夜明けまで踊り明かそう』を歌うイライザは、本当になんて素直でチャーミングなんだろうと思います。

そして、歌の力ってすごいと思う。
あの歌が人に伝える歓喜や高揚感を、文章で正確に書き表そうとしたら、書き手は そのために50ページ分くらいの文字を必要とするのではないでしょうか。
それを、ごく短い時間と僅かな言葉だけで表現できるのは、あのリズム・音の躍動感が受け手に伝える情報量がものすごいから。
あれは、文章では なかなか伝えられるものではありませんね。

──と、今回いただいたお題は、そういう『マイ・フェア・レディ』。
「氷河が瞬を教育する」&「それによって瞬が変化成長する」という点に重きを置いたせいで、『マイ・フェア・レディ』のロマンティック・ラブコメ(?)の雰囲気は全くない話になってしまいました。
amiさんには、大変申し訳ありません。

その上、リクエストメールで「最後はちゃんとハッピーエンドなので安心して読めて」とおっしゃっていただいたのに、今回の話は完全無欠のハッピーエンドとは言えないものになってしまいまして。
これまた本当に申し訳ありません。

んでもでも。
クールでお利口な氷河(根本は おばかさんでも、一見した限りではクールでお利口な氷河)は、書いていて とても楽しかった!
日頃 『おばかさん、おばかさん』と言いたい放題しながら、その実 私はやっぱり『かっこいい氷河』が好きなのねー と、認識を新たにした私。

星矢初期の、思いあがった感じやスカした感じが、ストーリーの進展に従って消えていくのは、間違いなく氷河と瞬ちゃんが、様々な経験を重ねたことによって変化成長しているからで、瞬ちゃんはもちろん氷河も、頭はいいし、柔軟な心の持ち主であることは確かなことなんですけどね。
うん。氷河はカッコいい男ですよ。ただ、クールではないだけで(それが大問題である)(でも、そこが好きなのです)。

というような 戯れ言、たわ言はこのへんで。
amiさん、素敵なお題をどうもありがとうございました!
そして、ほんとにほんとにごめんなさい……。





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