朝、目覚めた氷河は、最近すっかり馴染みになってしまったインターネットの『今日は何の日』なるサイトで今日が何の日なのかを確認した。 その結果、本日10月27日はとてもいい日だったので、彼は、無表情に喜んだのである。 そこに、氷河に少し遅れて目覚めた瞬の声。 「ふみゃ……おはよう、氷河。何してるの?」 寝起きの瞬は、隙だらけで実に可愛い。 こしこしと目をこすりながら尋ねてくる瞬に、氷河は、軽く左右に首を振った。 「何でもない。後で話がある」 瞬は、氷河の抑揚のない声音に首をかしげた。 が、氷河の声に抑揚がないのも、その表情に波がないのもいつものことである。 そして、氷河の“話”が悪い話でないことは、彼の瞳を覗き込んだ瞬にはすぐにわかった。 なので、瞬は、いつもと同じように、氷河に向かって微笑むと、 「待って。今、服着けるから」 そう言ってベッドの上に身体を起こしたのである。 そんな瞬に、氷河が、これまたいつもの通りに無言でこくりと頷き返す。 氷河は、瞬の身に着けているものを脱がせるのも好きだったが、瞬が服を身に着ける様子を見ているのも好きだった。 朝の光の中、昨夜とは違う穏やかな時間の流れ――と瞬の微笑。 まさに、これこそ至福の時! というものである。 秋も半ばを過ぎ、朝夕の冷え込みは厳しくなってきていた。 しかし、今日も世間は小春日和。 まして、氷河の視界に映る“瞬のいる光景”は春のように暖かい。 それは、昨日と同じように、穏やかで優しい秋の一日の始まりの光景のはずだった。 142年前の今日という日に、第26代アメリカ合衆国大統領セオドア・ルーズベルトが生まれてさえいなければ。 |