さて、そういうわけで、ついに決まったご主人様のキャッチコピーでしたが、バラ園のバラたちには、次の仕事が待っていました。


「ということで、めでたくアフロディーテ様のキャッチコピーは決まったが、問題は、我等がご主人アフロディーテ様が、実に謙虚なお人柄だということだ」
「そうだな〜。アフロディーテ様は、なにしろ高貴なお人柄だから、『よく来たな、青銅聖闘士の諸君。この、天と地の狭間に輝きを誇る美の戦士、魚座ピスケスのアフロディーテが、君たちの相手をしてやろう』なんて、ご自分でこのキャッチコピーを口にしたりはなさらないだろうしな〜」

「となると、このキャッチコピーを青銅聖闘士のひよっこ共に伝えるのは、俺たちバラの務めということになる」
「よーし。青銅聖闘士のひよっこ共がこのバラ園に来たら、俺たち全員が大音声で、このキャッチコピーを叫んでやろう!」
「いや、待て。我等がご主人様は高貴なお人柄だ。せっかく決まった完璧なキャッチコピー、俺だって大声で叫んでやりたいところだが、ここは上品に決めなければなるまい」
「うむ。さりげなく上品に、それでいて印象に残るようにしなくちゃならないだろうな」


「6号の言う通りだぜ」

それまで、仲間たちの意見を、珍しく無言で聞いていた1号が、やっと口を開きました。
バラ園のバラたちが、一斉に1号に注目します。

「アフロディーテ様は、下賎な青銅聖闘士共とは、美しさはもちろん、品格が違うんだ。大事なのは品格だぜ。ここは、上品にさりげなく、俺たち全員で、このキャッチコピーを囁いてやろう」

「おおっ、それは上品だな!」
「青銅聖闘士のひよっこ共が来たら、いっせーのせで、『天と地の狭間に輝きを誇る美の戦士、魚座ピスケスのアフロディーテ』、『天と地の狭間に輝きを誇る美の戦士、魚座ピスケスのアフロディーテ』、『天と地の狭間に輝きを誇る美の戦士、魚座ピスケスのアフロディーテ』、以下∞、だな」

「それを聞いたら、青銅聖闘士のひよっこ共、アフロディーテ様のあまりの高貴さに、腰を抜かすに違いないぜ!」
「闘う前から、勝敗は目に見えてるな」
「さすがは、我等がご主人様だ!」



「花の命は短いが、咲いてみせます、鮮やかに」
「散ってみせます、艶やかに」
「それが薔薇の心意気!」

「いえ〜〜い !! 」× バラの数


    薔薇が咲いた
    薔薇が咲いた
    真っ赤な薔薇が〜
    薔薇は薔薇は気高く咲いて
    薔薇は薔薇は美しく散る〜♪




かくして、双魚宮でのバトルの演出準備は整いました。
無数のバラたちに演出された華麗な闘いの幕が、今! 上ろうとしています!




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