ところで、1号と33号のやりとりは、当然のことながら、双魚宮のバラ園で交わされていました。
バラ園のバラたちに、プライバシーというものはないのです。
さすがに1号の胸騒ぎは知るべくもありませんでしたが、33号が落ち込んでいることは、仲間たちに筒抜けでした。
「33号。そんなことで、落ち込んでちゃ駄目だぞ!」
「気を大きく持て! 大丈夫だぜ。俺たちだって、最初はおまえみたいに小さな蕾だったんだ」
「そうさ、でも、アフロディーテ様のために頑張って頑張って、ここまで大輪の花を咲かせたんだからな」
「おまえもいつかは立派なブラッディローズになれるに決まってるさ!」
「みんな……ありがとう……」
仲間たちの励ましを受けて、健気に頷き返す33号の可憐なこと!
1号の花びらは、いつしか、熱い情熱の色に染まり始めていました。
「花の命は短いが、咲いてみせます、鮮やかに」
「散ってみせます、艶やかに」
「それが薔薇の心意気!」
「いえ〜〜い !! 」× バラの数
薔薇が咲いた
薔薇が咲いた
真っ赤な薔薇が〜
薔薇は薔薇は気高く咲いて
薔薇は薔薇は美しく散る〜♪
同じバラ園に生を受け、共に美しく散る日を待つ仲間たち。
その仲間たちと声を揃えて自分たちのテーマソングを歌っている間にも、33号の可愛らしい姿をちらちらと盗み見ては、初恋の胸騒ぎが収まらないバラ1号でありました。
──バラにはバラのロマンスがあるのです。
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