けれど――。
そんなにぎやかなバラ園の中で一輪だけ、胸に悲しみと切なさを秘めているバラがいました。
にぎやかなバラ園で、仲間たちの冷やかしを受けながら、ほのかに蕾の先を色づかせている33号。
幸せの絶頂にいるはずの33号の心には、けれど、一つの小さく鋭い棘が突き刺さっていたのです。
「みんな、知らないんだ……。アフロディーテ様が、もう永遠に僕たちの許に帰ってらっしゃらないことを……」
実は、バラ33号は、仲のいい蝶々から、最近の聖域の様子や城戸沙織に敵対した黄金聖闘士たちがどうなったのかを、すべて聞いていたのです。
美しいものしか見えない自分たちには見ることのできなかった、魚座の黄金聖闘士の最期の様子も──。
愛するご主人様の死。
そして、それを秘密にしていなければならない辛さ──が、33号の胸を痛めていました。
けれど、それよりも何よりも、33号を苦しめていたのは、
(でも、僕、こんなに悲しいのに、みんなや1号とこれからもずっと一緒にいられるのが嬉しいとも思ってる……)
──ということだったのです。
33号の花びらから透き通った雫が一粒、輝きながら零れ落ちていきました。
「花の命は短いが、咲いてみせます、鮮やかに」
「散ってみせます、艶やかに」
「それが薔薇の心意気!」
「いえ〜〜い !! 」× バラの数
薔薇が咲いた
薔薇が咲いた
真っ赤な薔薇が〜
薔薇は薔薇は気高く咲いて
薔薇は薔薇は美しく散る〜♪
双魚宮のバラ園では、今日もバラたちの歌声が賑やかに響いています。
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