1号と33号はそれでよかったのですが。
1号と33号以外のバラたちには、この事態は大問題でした。
「まあ、あの二人はほっとくとしてだ」
「アイオリアのバケツ攻撃はどーにかならんのか」
「うーん、水を飲ませてくれるのは有難いんだがな〜」
「アイオリアのあのガサツさは、本当に救い難いな」
「アフロディーテ様の、高貴にして細心なお世話が懐かしいぜ」
「ああ、アフロディーテ様は、バラの心がおわかりになる方だった……」
「うむ、実に……」
バラたちは、彼等の高貴で美しいご主人様の繊細な指先を思い出し、とても懐かしい気持ちになりました。
今度、あの優しい指先に触れてもらえる日はいつやってくるのかと、少し切ない気持ちにもなりました。
でも、きっと──きっと、いつの日にか、もう一度、ご主人様のあの白魚の指でアブラムシを一匹一匹取り除いてもらえる至福の時が、このバラ園に訪れるに違いありません。
今は、バラたちは、アイオリアのバケツ攻撃に屈することなく、その日の訪れを辛抱強く待ち続けるしかないのです。
そして、待ち続けたその日が訪れた暁には──彼等の高貴で美しいご主人様に、これまででいちばん美しい自分たちの姿を見せてさしあげなければなりません。
その日を夢見て、強くたくましく美しく生きていこうと、バラたちは、今日も決意を新たにしたのでした。
|
 |
 |
|