「なにィ? 暗黒スワンがまた半殺し?!」

 港の倉庫で朝イチに暗黒スワンの瀕死の帰還を聞いた一輝は寝耳に水だった。

「影よ。それで一体あいつが誰にやられたと」

 一輝は彼のそばに控える黒いフェニックスに物を尋ねる。

「一輝様。いえ、それが、階段を踏み外しただけだと…」

「階段〜?」

 一輝はいぶかしみながら四天王の居住している倉庫に訪れた。

「あ、一輝様!」

 暗黒ドラゴンが一輝の訪れに気付いて平伏する。

「スワンのバカはどこだ」

「はい、あちらの奥です」

 一輝はずかずかとスワンの寝床に押し入る。すると、全身大怪我してズタボロになった暗黒スワンが幸せそうに横たわっていた。

 一輝はその姿を見てぶるぶると怒りに震えた。

「アホか! なんで階段を踏み外して首に鎖のあとが付くんだ! 全身縛られたようなあとが付くんだ! どう見ても鎖でメッタ打ちに

された状態じゃないか。瞬のやつにやられたんだろうが!」

 一輝は思わず暗黒スワンの胴に蹴りを入れる。

「ぐはっ。…はっ! 一輝様!」

「お前ー…。だから瞬には会うなと…」

「いえ、その、俺……、幸せです…」

 暗黒スワンは顔を赤らめて横を向いた。

 

「あほー!!!!!」

 その日、港の倉庫からは一匹の大きな火の鳥が何度も天高く宙を舞い、はばたいたという。

 

 

END





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