「……氷河。僕、王子様になりたい」 瞬は、体高に比例して馬体の大きな氷河の馬に、まだ跨ることもできずにいた。 まるで椅子に腰掛けるように身体を横にしてしか馬に乗ることもできない瞬が、氷河の腕の中で、ひどく真剣な顔をして、その決意を口にする。 王宮から公爵邸への帰路は、ごく短いものだった。 意欲と手腕を持ちながら、歩いてでも通えるほどの場所にある王宮に入ることを許されなかった父の無念に、しかし、今の瞬は思いを馳せてもいない。 瞬は、父親とは別の方法で、その望みを果たそうとしているのだ。 「僕、変えたいの、あの王宮の何かを」 「瞬様……」 瞬の意思と望みを阻むようなことは、氷河にはできなかった。 できない自分を、氷河は、苦い思いと共に自覚していた。 |