「どうだ? 公爵の身体は素晴らしいだろう」 瞬の横に上体を起こし、ハーデスは、目眩いに似た混乱に捉われて、額に手を押し当てていた。 同意せざるを得ない王の揶揄を無視して、ハーデスが氷河を睥睨する。 「君に、公爵を責める権利がないことはわかっているんだろうな」 いっそ全ての罪を氷河に押しつけてしまいたいと言わんばかりに、ハーデスの口調は苛烈だった。 今のハーデスにとって、罪を負っているのは王などではなく、瞬に愛されている男の方だった。 ――言われるまでもなく、その罪を他の誰かに帰することは、氷河にはできなかった。 むしろ、そうすることで、氷河はなんとかその場に立っていられたのである。 |