歴史、政策、文芸、兵法等の分野に関しての審査は、重臣や学者たちを相手にしての問答・議論という形で行なわれた。 この選定の場に審査員として呼ばれた学者たちは、最初のうちは、王の意がふたりの候補者のどちらにあるのかを見極めることの方に熱心だった。 王の意に染まない候補者を推して、王の機嫌を損ねることを恐れて。 王の意図がどちらかの上にあるというわけではないらしいことに気付いてからやっと、彼等は職務を全うし始めた。 王の機嫌を損ねる心配がなく、しかも、結局のところ、その決定権は王のみが有しているとなると、審査選定にあたる学者たちも気が楽になる。 本腰を入れて自らの仕事に取り組み始めた学者たちは、すぐにその仕事の楽しさに気付いた。 自分では何も考えずに、諾々として王の命令だけに従う現職の大臣や将軍たちとは違って、若いふたりの見識と着想は斬新で躍動的だった。 学者たちは、すぐに、このふたりとの論議に熱中し始めた。 重臣たちが自分たちよりはるかに見識の優れた若者たちに驚いたのはもちろん、選定のために招聘された見識者たちは、 「主席侯爵殿はもちろんですが、公爵はとても13歳とは思えぬ聡明さです」 と口を揃えて、ふたりを絶賛し、共同統治という形態での王位継承を提案する者もいた。 瞬の学識には、王自身も驚いているようだった。 「従順で大人しいだけの子供かと思っていたが、さすがにあの公爵の遺児だけはある。天は公爵に二物も三物も与えたものらしいな」 王の言葉には、ふたりの論議のどこが優れているのかを噛み砕いて説明されなければ理解できない無能な臣下たちへの皮肉も込められていた。 選定のその様子を、氷河は、身分柄、末席から見ていることしかできなかったが、瞬はちらちらと氷河を見ては力を得たように、ハーデスと──否、むしろ招聘された学者たちと渡り合っていた。 |