一瞬遅れて、瞬は、身体を切り裂かれるような痛みに襲われ、全身を硬直させた。

だが、それからしばらく、瞬の身体にはそれ以上の何事も起こらなかった。
一度きつく閉じた目を少しずつ、そして、恐る恐る開ける。

おそらくは自分の快楽にだけ支配されて、彼が犯している相手を見てもいないのだろうと思っていた氷河が、瞬の顔を覗きこんでいた――見詰めていた。
その眼差しは、瞬を気遣うというよりはむしろ、夢を見ている者のそれのようだったが。

「気持ちいい……瞬の中……。瞬、好きだ、大好き……」

氷河の青い瞳に出会った途端、瞬の身体の奥で、これまで感じたことのない疼きが生まれる。
それがいったい何なのか、瞬自身にはわからなかった。

「あっ……ああ……」
その疼きが、瞬の唇を伝って、瞬の身体の外に少しずつ洩れ始める。
瞬自身には、その喘ぎは止めようがなかった。

その先までは、もしかしたら、氷河はまだ予習していなかったのかもしれない。
氷河が自身の身体を動かし始めたのは、彼の身体が彼にそうするように命じたためのようだった。
半分以上が甘い吐息でできていた瞬の喘ぎに、僅かばかりの非難が混じる。

「痛い? 痛いの? でも、我慢して、瞬」
「氷河……」

瞬には、自分自身がわかっていなかった。
謝罪するように氷河の唇が自分の唇におりてくると、それで瞬は、氷河を許せるような気持ちになってしまったのである。

だが、その唇が離れた時、瞬を愛撫し始めたのは、荒々しく乱れ、それでいて一定のリズムを刻む氷河の吐息だった。
瞬の身体が激しく揺さぶられる。
氷河はもう、瞬を見ていなかった。

途端に、瞬は自分に暴力が加えられていることを思い出した。
「い……いやだ、こんな……こんなの、氷河、やめて! 氷河……っ!」

瞬の声も、既に氷河の耳には届いていないらしい。
瞬の懇願は無視された。


氷河の荒い息の合間に、一度だけ言葉が混じる。

「瞬、大好き」

それが意味のある言葉なのかどうかすら、瞬にはわからなかった。






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