「あ……」

瞬が目覚めた時、そこに氷河はいなかった。
夜着も、就寝時に身に着けたまま、胸や腕に口付けられた跡もない。

2、3日はまともに歩くこともできないだろうと思っていたのに、身体のどこにも、氷河との交合の痕跡は残っていなかった。

確かに、あれは夢だった――のだろう。
瞬は、実際には何もされていない――していない――のだ。

だというのに、瞬は、自分の身体の中心がいまだに疼き続けているような感覚から逃れることができなかった。
氷河の感触が残っていて、自分を貫いていたものが、まだ身体の中で蠢いているような錯覚が、どうしても消えてくれない。

「氷河……」

快いと思えるような喜びを味わったのは、氷河を受け入れると決めてからの短い時間だけだった。
だが、瞬の中に残っているのは、その短い時間に味わった歓喜だけである。

瞬は、ひとりきりの寝台に突っ伏して、身体の内に残っている氷河の記憶に身悶えた。


夢ではなく現実の世界で、瞬はどうしても氷河に会いたかった。





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