氷河と瞬は、さすがにその日は、二人が閉じこもった部屋から出てこなかった。 が、翌日には、彼等は、昨日までと同じように仲間たちの前に姿を現してくれたのである。 瞬は少し恥ずかしそうに、はにかんだような笑みを浮かべて、星矢たちに、 「心配かけて、ごめんなさい」 と、小さな声で謝罪した。 これまでよりずっと自然に、しっくりした様子の二人を見て、星矢と紫龍は、絶対に瞬に真実を知らせてはならないと思ったのである。 グラード財団の今期の医薬部門の売上げがどういうことになっているのかは、紫龍や星矢の知るところではなかったが、財団が商品宣伝に予算をつぎ込み、それに見合うだけの利益を得ていることは確実のようだった。 人間の精神・感情の持つ無限の可能性──と、沙織は言った。 それは確かにそうなのだろう。 しかし、それ以上に、人の心と身体を動かすものは何なのか、社会を動かす力の正体が何なのかを、星矢と紫龍は思い知ったような気がしたのである。 Fin.
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