「……誰も私の言うことなど聞きもしない。本当に、みんなアテナの聖闘士失格よ」 だが、だからこそ守りたいのだと呟くアテナの姿が、早朝のホテルのバルコニーにあった。 再び、闘いが起ころうとしている。 不安は大きくなるばかりで、沙織にはもはや、『せめて青銅聖闘士たちには生き延びてほしい』という消極的な希望しか残されていなかった。 だが、今──。 沙織の胸中には、もしかしたらアテナの聖闘士失格の彼等なら、常軌を逸した力を持つ敵に打ち勝つことができるのではないかという、別の希望が生まれ始めていた。 敵は、人間の死を司る冥界の王。 沙織はすがるような気持ちで祈り、迷っていた。 Fin.
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