まばゆい光をまとった菩薩は地面に降り立つと、氷河に向かって言いました。
「久しいな…」
「お、お久しぶりです。」
こう言って氷河はカミュに向かって一礼しました。なにせ一応師匠です。
その時です、カミュの後ろからもう一人が出てきて氷河に向かって親しげに話し掛けました。
「よう、氷河。200年ぶりだな。」
「アイザック!」
「お前が出られたと聞いてかけつけてきたぜ。」
アイザックと呼ばれた片目の男はカミュの弟子であり、氷河とは兄弟弟子にあたる人物でした。

「お隣のかわいいこが今回の三蔵法師かい?」
「ああ、名前は…・」
ここまで言って氷河はまだ名前を聞いていないことに気が付きました。
「え、ああ、僕は瞬と言います。でも、残念ですが僕は貴方がたの言う三蔵ではありません。」

「なに!!?」驚いた氷河は言いました。
「なんだって!!」アイザックのリアクションはオーバーでした。
「……。」 カミュはこれでも驚いています。

後に瞬は言う。
―あの時、確かに時は止まった。―と、

それは後日談なので置いておいて、

「あ、あの〜。大丈夫ですか?」
三人の様子を心配した瞬の呼びかけにも誰も答えません。皆空を見上げるばかりです。
そんな三人の精神が通常空間に戻ってくるのには少々の時間がかかりました。
ちょうど、夜明けが迫ってきたときやっと皆、我にかえれたのです。

「に、してもどういうことだ。オレは三蔵にしか封印は解けないと聞いていたんだが…」
そう言って氷河はカミュの方を見ました。何故って彼から聞いたことだからです。
「封印はオレがやったものじゃない。」
だ、そうです。
「しかし、三蔵は先月都を発ったと聞いている。ちょうど今頃この辺りを通るはずだ。」
一番最後まで固まっていたアイザックもやっと元に戻ると疑問を口にしました。
「え、ええ…」
瞬の様子に何かを感じた彼はさらに言いました。
「事情を話してくれないか?」
そう言われて瞬は半ば諦めたように語り出しました。
「実は、・・今回経を取りにいく役目、つまり六代目三蔵を命じられたのは紫龍という者だったのですが、都を出て数日のうちに消息が途絶えてしまったのです。それで僕は探しに…」
「なんだって!!」
「三蔵が行方不明になるなんて…」
「原因に心当たりは無いのか?」
「無いわけじゃないのですが…」
瞬はまたしても口を閉じて言いにくそうにしています。
「あの、そのですね。」
「ああ、一体何故なんだ?」
「彼、紫龍はですね、、その 方向音痴 なんです。」


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―そんな奴、旅に出すな!!―(一同心の叫び)