六・旅続 何処迄
「遅かったな。」
息せき切って妖怪の棲家に駆けつけた氷河を出迎えたのは意外な人物。ミロでした。
見ると、彼の背後には山のように妖怪の体が積まれています。
その様子、まさに 屍累々。
「何故ここに?」
氷河の問いにミロは少々のいやみを込めて言いました。
「誰かさんがあまりにも頼りないもんでな。」と、
あまりの言い方にとてもむっとした氷河でしたがそれは次の瞬間に吹っ飛んでしまいました。
「氷河!!」
そう言いながら瞬が駆け寄ってきたからです。
「瞬。無事だったのか。」
「うん。ミロさんが助けてくれたの。氷河こそ無事で良かった。」
うれしそうに言う瞬にミロは、
「気にするな。三蔵を守るのは俺達の役目だからな。それより瞬、良いことを教えてやろう。」
「良いこと?なんですか。」
「実はな、紫龍が見つかった。」
衝撃の告白です。
「なんですって!!?」
「嘘をつけ。」
驚きの瞬に疑いの氷河。でも内心どきどきしていたのです。なにせ本物の三蔵が見つかれば瞬とはお別れしなければならないからです。
「嘘ではない。どこにオレが出かけて行ったと思う。紫龍に会う為だったんだぞ。」
心外だ。とばかりにミロが言いました。
「あの、それで紫龍はいまどこに…」
「ああ、ビルマにいた。」
・ ・ …・ ・・ ・ ・・ …・・
一瞬の静寂の後、
「ビ、ビルマですか…」
「ああ、ここからずっと南の国だ。」
南どころか天竺とは全くの逆方向です。方向音痴にもほどがある。と、瞬が思っていると、
「迷った末にたどり着いたそうなんだがなんでも民族運動に巻き込まれていてな。独立派の大将なんだと。」
しれっとミロが言います。そしてうれしそうに付け加えました。
「それで手が離せないから“天竺行きは瞬に任す。”と、言っていたぞ。よかったな、正式な三蔵になれて。」
‐・・ ・そ、そんなぁ‐
と、一度は思った瞬でしたが
「どうかしたか?」
そう言ってくる氷河を見て、
‐まあ、いいか。‐と、思い直して言いました。
「ううん。なんでもないよ。さあ、行こう。まだ天竺は遠いんだから。」
「ああ。もちろんだ。」
そして一行は今日も旅を続けるのでした。
彼らの旅は天竺に着くその日までまだまだ続きます。でも今回のお話しはこれまで。
また、新たな冒険でお会いすることといたしましょう。
終
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