その日から氷河は耐える男となった……。


3日……5日……1週間が過ぎ、2週間が過ぎてもまだ一輝はいた。

氷河は、理性の限界が訪れるのが先か、一輝が消えるのが先か、すでにゴール寸前の競走馬の如き切羽詰まった有様となっていた。




そうして、ついにある夜の事。


深夜、一輝は、何かの物音で目が覚めた。

ギシッ……ギシギシッ……

(……ベッドのきしむ音か……?)
それは、どうやら隣の瞬の部屋から聞こえてくるようではあるが、寝返りにしては音が妙だ。
一輝がじっと耳を澄ませていると今度は押し殺したような瞬の声が響いてきた。

「……ん…はぁっ…ふ…っ……」

(瞬 !! 病気かっ !!? )

慌てて瞬の部屋に駆け付けようとしたその時、もう一つ耳に飛び込んで来た声があった。

「……瞬、力を抜け。その方が楽になるぞ……?」

(氷河 !? なぜ奴が瞬の部屋にっ !? )

「む……無理だよ氷河ぁ……んっ……」
平素一輝が聞いた事がないような甘い声。

「……ここか……?」
「…っ…! ……だ、だめっっ…あッ……」

(いいいいったい瞬の身にななな何が !? )
一輝も心の動揺を隠せない。

「……そんな事を言って、こんなになってるじゃないか…。」
「…やっ…… !! ひ、氷河のばかぁっ…っ……!」

もしや……いや、瞬に限ってまさか…でも……。
一輝は壁に耳を張り付けたまま、一人頭を悩ませていた。

「……こ、こんな格好、恥ずかしいよ氷河……。んッ…は、ぁっ……」
「……もう耐えられないんだろう? だったら、我慢しろ…。」
「ふぁッ……っ…!」

段々と一輝の顔には青筋が浮かび、背後に怒りの小宇宙が鳳凰となって現れはじめているが、そんな事とは露知らずの二人は、どんどんコトを進めてゆく。

「……瞬、動かすぞ……。その方が、すぐに良くなるからな…?」
「あっ……や、やぁっ…はっ…あ、ああああっっ !! 」



――― ぷつん ―――



「ぬおおおおっ !! 許すまじ氷河 !!! 我が最愛で清らかな瞬をおおおおおっっっ !!!! 」

瞬の声の余韻が消える前に、切れた一輝は瞬の部屋のドアを鳳翼天翔で吹き飛ばしていた。


そこで一輝は目の前の光景を見て思わず息を呑んだ。




















それは、『こむらがえり』をした瞬の足をマッサージする氷河の姿だった……。







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