彼が現れたのは、歴史の必然だったのかもしれなかった。

北方から勢力を伸ばしてきたその国の王は、天才的な軍略で、乱立していた諸国を滅ぼし、あるいは服属させ、瞬く間に大陸の覇権を手中に収めていった。
北の国の王は、敵対した国の王や軍人たちには容赦のない極刑を科したが、民衆には融和政策を採ったため、戦乱に疲れきっていた民衆は、概ね、彼の支配を歓迎したのである。

大陸のほぼ全土を手中に収めた王が、彼の帝国に服属することを最後まで拒んでいた国を滅ぼしたのは、彼が南進を開始してから3年後のこと。
北辺の一部族の首長に過ぎなかった一人の青年が、名実共に大陸の支配者となったのである。




だが、その日、大帝国の支配者となった金髪の男は、至極憂鬱そうだった。


人生最大の目的と定めていたものを、20代半ばで成し遂げてしまったのである。
大国は、建設することよりもその運営の方がはるかに困難なのだということを理解してはいたのだが、目的喪失から来る脱力の思いは否めない。

目の前に、最後の一国の宰相であったという壮年の男から、王宮にあった多くの宝物や美女を献上品として披露されても、王の心は一向に晴れなかった。


――が。





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