ある日のことです。

その日も、カミュ国王は、甥の氷河や諸侯たちの『いー加減に嫁もらえ』攻撃にうんざりしていました。
カミュ国王は、ヨメを貰うことや子作りに励むことより、騎士同士のちゃんちゃんばらばらをしたり見たりしている方が、ずっとずっと好きだったのです。
それこそが、男のロマンだとも思っていました。


そんな時、たまたま城の窓から燕が一羽、玉座の間に飛び込んできたのです。
そして、その燕は、王の膝に、黒にも亜麻色にも栗色にも、光の加減によっては緑色にも見える細い髪の毛を1本落とすと、再びどこへともなく飛んでいってしまいました。

カミュ国王は、諸侯や氷河を黙らせるために、
「この不思議な色の髪の娘となら結婚してもいい。私は、この娘以外の誰とも結婚しない」
と宣言しました。

髪の毛1本だけを見て、その主を娘と決めつけるあたり、カミュ国王にも問題ありでしたが、彼は、その髪の主など見つかるはずがないと高をくくって、無責任にも、そう断言したのです。


ところが、カミュ国王の甥である氷河には、国王の宣言は、渡りに船の棚からぼた餅。
すなわち、降って湧いたような幸運でした。

氷河は、カミュ国王の言葉を聞くと、すぐに、王の花嫁探しの旅に出る決意を、国王や諸侯に伝えました。
実は、氷河には、その髪の主に、心当たりがあったのです。





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