自分が悪魔だと気付いたとき、僕は古い書物で、自分の係累について調べてみた。

ある本には、魔界の王サタンは神の第一子だと書かれていた。
でも、神は、第二子であるイエスに、愛と地上の権利を与えた。
長子の権利を奪われたサタンは、神を恨み、神に愛された弟を妬んで、光あふれる世界から自ら堕ち、悪魔の頭領になったんだって。

そして、サタンは神の愛と奪われた長子の権利を求めて、足掻いている。
弟に与えられた世界を闇の色に染めようと画策している。


僕には、わかるよ。
悪魔はいつだって、光を自分のものにしたいと恋い願っているものなんだ。
そして、そのための手段を選ばない。
どんな魔法も、どんな呪術も、どんな卑怯な手だって使う。
自分の持てる力のすべてを駆使して、欲しいものを手に入れようとする。
そうすることが、悪魔にとっては、“生きている”ってことなんだ。

それを、人や神は、“邪悪”と言う。


でも、僕は悪魔だもの。
欲しいものを手に入れようとした時に、“邪悪”以外の方法を知らないんだ。
僕の使う呪文や魔法。
それは、僕にとっては、生来の自然なもので、それがたまたま光の世界の住人たちには“邪悪”だったというだけのことなんだ。





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