「僕なら、食べきれないほどのケーキをくださいって、願うけどなー」 「あ、それいいね!」 1人の小人のアイデアに、別の1人が相槌を打ち、それとはまた別の小人が、首を横に振る。 「でも、自分が欲しいものは自分で手にいれなくっちゃ。魔法で手に入れたケーキなんて、きっとあんまりおいしくないよ」 「そうだよね。だいいち、僕たち、自分のために魔法は使えないし」 「でも、きっと、だからいいんだよ」 小人たちの意見は、すぐに統一された。 「おいしいケーキのために頑張るのって、楽しいもんね」 「幸せだよね〜」 「生きてるって感じがするよね!」 皿の上のケーキは綺麗になくなっていた。 おなかいっぱい幸せいっぱいで、小人たちは、行儀良く『ごちそうさま』を言ったのである。 「あっ、見て見て! あのふたり、ちゅうするよ!」 「あ、ほんとだー!」 カラになった皿の上で、小人たちが、たった今生まれたばかりの恋人たちの姿を見ようとして、身を乗り出す。 それでなくても満腹で幸せいっぱいだった小人たちは、自分たちの魔法で幸せになった2人を見て、ますます楽しい気分になったのである。 ――幸せというものは、そんなふうにして、生まれるものなのかもしれなかった。 Fin.
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