「そんな冷たいこと言うなんて、氷河は僕のこと好きじゃないのっ !? 」 瞬のその言葉に、氷河は目をむいた。 瞬の口からそんな激した言葉──しかも、脅迫の色を帯びた──を聞くのは、氷河は、それが初めてだったのである。 しかも、言われたタイミングが最悪だった。 氷河は無論、瞬が、時機を見計らって――氷河が拒否権を発動できない時機を見計らって――そんなことを言い出したのだとは思わなかったが、それにしても、やはりそれは最悪のタイミングだった。 それは夜で、氷河がやる気満々で瞬の部屋に出向いた時のことだった。 瞬を抱き寄せ、その唇のやわらかさを味わいながら、瞬が身に着けていたものを手早く取り除き、氷河がいよいよ本腰を――まさに、本腰を――入れようとした瞬間に、瞬は、なんと、1週間後に迫った一輝の結婚式をブチ壊すのに協力しろと、氷河に言ってきたのである。 その要請を、軽く一蹴した氷河に投げつけられてきたのが、そのセリフだった。 氷河は、はっきり言って、大いに慌てた。 ここで、瞬の機嫌を損ねたら、フィニッシュまでいかせてもらえない――かもしれない。 氷河は、なけなしの理性をフル稼働させて、瞬の求めていることの非を諭し、かつ、瞬をなだめすかそうとしたのだが、瞬は折れてくれなかった。 氷河は切羽詰っていた。 我慢の限界に達しかけていた。 そして、彼は、 「一輝の結婚式でも葬式でも還暦祝いでも何でもブチ壊してやるから、おとなしく脚を開け!」 ――と、瞬を怒鳴りつけてしまったのである。 氷河の協力受諾の約束を手に入れた瞬が、まるで春の訪れに頑なに気付かぬ振りしている桜の蕾のように固く強張らせていた身体から力を抜く。 氷河は、瞬の緩慢な動作の終わるのを待ちきれずに、瞬をこじあけた。 氷河の性急な所作を責めるような瞬の小さな悲鳴すら、氷河には快い刺激でしかなかった。 委細構わず瞬の中に押し入り、為すべきことを為して、快楽果てた後。 氷河は、自分が口にしてしまった約束の言葉を、猛烈に後悔することになったのである。 |