僕が氷河の不在に気付いてから、氷河が帰ってくるまでに、どれほどの時間が経っていたんだろう。

「瞬 !? 」
泣き疲れて自失している僕の肩を揺さぶる氷河の手に気付いた時、僕は、氷河の気配と朝の気配とを同時に感じていた。

「ひとりが恐かったか? すまない。食料を受け取りに行っていたんだ」
氷河の部屋で、頬を涙で汚している僕を見付けた氷河は、まるで言い訳するように、そう言った。

「氷河……」

ここは訓練のためでなければ食事の支度もしなくていいはずのリハビリセンターなのに、どうして氷河がそんなことをしなければならないのだろう。
それも、夜の夜中に。

そんな疑念は、でも、すぐに僕の中から消えてしまっていた。 
そんなことは、どうでもいい。

「やだ! ひとりはやだ……!」
氷河にしがみついて、僕は、必死にそれだけを訴えていた。

「……瞬、すまない」

いつかどこかで聞いたことのあるような謝罪の言葉が、僕の耳許で囁かれた。






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