ところで、一般的に、人は、惚れた相手にどういうふうにその思いを伝えるものだろう。
自慢にもならないが、俺は、この手のことで自分から他人に働きかけたことがない。
なにしろ、この美貌だ。
俺がそこにいるだけで、女共は向こうから寄ってきた。

直截的に、
『瞬、俺はおまえが好きだ』
はマズいだろう。
いくら何でも芸がない。

しかし、毎日顔を合わせている瞬に、
『ずっと、俺の側にいてくれ』
てなことを言ったところで、瞬には訳がわからないに違いない。

俺は、瞬と家庭というものを営みたいわけでもないから、
『俺のために味噌汁を作ってくれ』
も駄目。
今の日本じゃ、
『俺と結婚してくれ』
も使えない。

何も言わずに押し倒すのも瞬向きじゃないし、プレゼント攻勢を仕掛けても、瞬は心を動かしてはくれないだろう。

決して失敗しない、必ず成功する完璧な恋の告白というのは、いったいどうすればできるもんなんだ?


『愛』がどういうもので、『恋』がどういう感情なのかは、俺は知りすぎるほどに知っている。
瞬に会って、瞬を知って、瞬の側にいて、瞬を見ていて、そりゃもう目一杯、瞬に教えてもらったさ。

だが、それをどうすれば受動態にできるのかが、俺にはわからなかった。






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