「瞬ーっ、俺、喉渇いたー」
「お茶にする? 星矢、何がいい?」
「俺、冷え紅茶」
「アイスティーって言ってよ。氷河と紫龍は?」
「アイスのウーロン茶」
「30年物のドンペリが飲みたい」

「紫龍がウーロン茶で、氷河は水道水ね」
自分のスタイルを取り戻した瞬が、仲間たちのオーダーを確認し、(両脚を揃えて)座っていた椅子から立ちあがる。

「瞬、冗談だ。コーヒーくれ、コーヒー!」
氷河は慌ててオーダーを訂正したが、瞬は氷河のオーダー変更を受け入れようとはしなかった。
「用意してもらう立場で、冗談なんか言う人には水道水で十分です!」

「おい、瞬! いや、瞬ちゃん、瞬様!」
瞬より100倍弱い立場にある氷河は、結局、断固として男らしい瞬の後を必死に追いかけることになってしまったのだった。



「平和だなー」
氷河と瞬の姿が消えたラウンジで、星矢がしみじみと呟く。

「うむ。これこそ、まさに平和だ」
紫龍も、星矢に同意見。


城戸邸の青銅聖闘士たちの上には、また退屈な平和の時が戻ってきていた。
窓から見える水色の空は、ひと月前よりもはるかに高いところにあり、白い山のように盛り上がっていた入道雲は、今は、薄い絹のような鱗雲に変わっている。


夏が、終わろうとしていた。






Fin.






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