『好きな人と一緒にいて、見詰め合って、キスして、肌を触れ合って、抱きしめ合うのって、それはとっても気持ちのいいことだよ』 「そんなにいいもんなのかなー……」 ラウンジの長椅子では、結局怪我のひとつも負わずに済んだはずの氷河が、瞬の膝を枕にして横になっている。 瞬は、図体のでかい駄々っ子を持て余しているような素振りを見せながら、瞳だけはどこか楽しそうに微笑んでいた。 星矢は、そんな二人を、少し離れた場所にある肘掛け椅子に膝を丸めるような格好で座り、ぼんやりと眺めていたのである。 「まあ、そのうちに星矢にもわかる時がくるだろう」 「俺、ほんとに、瞬のためにしたつもりだったんだ」 それが、本当に、“つもり”でしかなかったことが、星矢を切ない気分にさせていた。 紫龍が、そんな星矢に微苦笑を向ける。 「星矢もいつか、そういう相手に出会う時がくるさ」 そう言って、紫龍は、拗ねたような目をしている星矢の頭をぽんぽんと叩いた。 Fin.
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