その日の午後からだった。 氷河が、銀色のマスク以上に奇天烈なもので、自らの下心の隠蔽に取り組みだしたのは。 氷河が、股間防護のために持ち出してきたもの。 それは、『ザクとは違うのだよ、ザクとは』のセリフで有名な、MS-07B・グフ標準装備型8分の1型モデルだった。 いったいどこから調達してきたのか、氷河はその日から、全長が2メートルほどある超合金製のモビルスーツを グフはザク以上の重装甲・高機動を実現したスグレもののモビルスーツだが、それを操縦するならともかく着用するだけでは、人々の賞賛は得られない。 実際、ザクに身を包んで日常生活を送るようになった氷河が得られたものは、周囲の人々の嘲笑と白眼視のみだった。 瞬は、氷河に、そんなものを着込むのはやめてくれと泣いて頼んだのだが、男の最も大事な部分(股間)と最も大事なもの(沽券)がかかっているだけに、氷河説得は至難の技だった。 氷河が、それでも美形キャラであったことは、彼にとって実に幸いなことだったろう。 トイレに行かない美形キャラは、それで悲惨な目に合うことだけはなかったはずであるから。 Fin.
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