なぞなぞたてろ。
同じ鳥でも飛ばないとりはなあんだ?

──それは、ひとりという鳥だ。




群青の光の中で静かな眠りについている氷河の横顔を見て、瞬は、昔読んだことのある哀しい童話を思い出した。
ひとりという名の、寂しいとりの物語──を。

瞬は、氷河を目覚めさせる方法を知っていた。
その唇に、ひとりを厭う人間の熱い息吹を吹き込むだけ。
それだけのことで氷河は目覚めるのに。
瞬はそうすることができずにいた。

目覚めた時、氷河が、彼を目覚めさせた者に嫌悪の色を見せ、ひとりでいることを望んだとしたら。

瞬は、そうなることが恐ろしかった。
だから、瞬は、氷河の寝顔を無言で見詰めていた。
いつまでも、ひとりで、見詰めていた。



* 寺山修司 『壜の中の鳥』



【next】