氷河は幾度も瞬に触れようとした。

月の光の中で、滑らかな瞬の肌は、闇に浮かびあがる淡い色の真珠のように、ほの明るく清浄な光を放ち、幾度も氷河を誘った。
瞬の肌は、真珠よりもやわらかいはずだった。
その胸が、目覚めの時を待つかのように、微かに上下している。

逆らい難いその誘惑にかられるたび、けれど、誘惑以上に強い力を持った不安が、氷河の心をためらわせた。

触れた瞬の肌が、石のように冷たかったらどうすればいいのか──と思う。
清らかなものは、残酷なもの。
それは、穢れを頑なに拒む。

自らの不浄を知っている氷河にはどうしても、その禁忌を犯す勇気を持つことができなかった。






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