「──孤独な鳥は、とても優しく歌う。そして、二羽になった鳥は……」 「コケコッコーって鳴くんだろ」 感慨深げな紫龍の呟きに、カスタネダの著書など読んだこともない星矢が続ける。 「それはニワトリだ」 星矢のくだらない駄洒落を聞かされた紫龍は、もう少しマトモな詩句は出てこないのかと、思い切り渋い顔を星矢に向けた。 城戸邸の庭の植木の陰に隠れ、事の次第を見守っていたのは──孤高に優しく歌うはずの、別の孤独な鳥たちだった。 「粋な落ちをつけて、この顛末を綺麗にまとめてやろうと思ったのに」 「どうカッコつけてみたって、俺たちのしてることはただの覗き。おれたちは出歯亀。鳥なんてそんなスマートなもんじゃない。カッコなんかつけずに、『めでたしめでたし』でいいじゃんか」 身も蓋もない星矢の言葉に、紫龍は憮然となったが、しかし、それは事実である。 6年もの長きに渡って連綿と続いていた氷河の子供じみた恋が、やっとオトナの成就を迎える日がきたのである。 ここは星矢の言う通り、『めでたしめでたし』で締めていいはずだった。 「あ、でも、孤独な鳥が二羽になるとインコになるのは知ってるぜ、俺」 「インコ?」 その締めを台無しにしてくれたのは、他ならぬ『めでたしめでたし』の提案者である星矢だった。 「それまで一羽だけだったのが二羽になるとさ〜、浮かれて 「…………」 6年目の感動の名場面で、星矢に最低最悪な親父ギャグをかまされた紫龍は、手加減のない廬山昇龍覇を彼の戦友にプレゼントしたのだった。 めでたし めでたし
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