「僕は……」

子供の頃の夢──。
そんなものを持っていただろうかと、思う。
あの頃、瞬が望んでいたのは、ただ一つのことだけだった。

「僕は、強くなりたかった。それが僕の夢だった。でも、自分の進む道を自分で選ぶなんてことは──そんなことができるなんて考えたこともなかったし、選べるとも思っていなかったから……。でも、どこででも、どんな状況ででも、強くありたかった。そういう人間になることが、僕の夢だった……」

兄の負担にならないように、仲間たちの足手まといにならないように──。
瞬の望みは、ただそれだけだったのだ。

瞬の“夢”を聞いた沙織が、深い溜め息を漏らす。
幾度か瞬きを繰り返してから、その瞼を伏せるようにして、彼女は呟いた。
「瞬は、自分の居場所を見つけるところから始めなければならないようね……。そうね、私は、そんなことを考える時間をさえ、あなたたちから奪ってしまったのね」

それは沙織のせいではないと、瞬は首を横に振ったのだが、沙織はそれを寂しげな微笑で受けとめただけだった。
そして、その視線を、最後の一人に向ける。

「氷河は? あなたの夢は何だったの?」






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