地球上の立法・行政・司法の中枢機関が集中している首都・サンクチュアリで、月に1回、DBとヒトの代表者たちによるコンベンション・パーティが開催される。
DBとヒト、それぞれ50名ほどのリーダー格の者たちが一堂に会して意見交換を図り、親睦を深める──というのが、その開催目的だった。

元老院ビルの最上階から、パーティ会場であるフロアに下りてきた氷河は、ヒト側のコンベンション・メンバーの中に奇妙な人物がいることに気付いて、一ヶ月振りに上京・・してきたヒトの大代表に声をかけた。

「場に似合わない子供を連れてきたな。ヒト側の人選はおまえに一任されていることになっているが、形式的にメンバー選別の投票は行なっているんだろう」
「公正な選挙で選ばれたメンバーだぞ。俺の強力な推薦があったとはいえ」

ヒト側のコンベンション大代表は、若い長髪の男で、名を紫龍と言った。
ヒトほど経験を積まなくても生来の才能がその不足を補うDB側の代表者たちが若いのは当然のことだったが、才能の欠損を経験で補うヒト側の代表者たちは、ほとんどが壮年から老年に達した者たちで構成されている。

にも関わらず、まだ20代の青年にすぎない紫龍が、ヒトの代表としてこの場にいるのは、彼が世界最高レベルのDNAデザイナーという肩書きを有しているからだった。
が、氷河が目にとめた人物は、その紫龍に輪をかけて若かった。
成人しているのかどうかも怪しい。
ほとんど子供と言っていいような姿をしていた。



初めて足を踏み入れた首都、機能的ではあるが無機質な建物。
巨大な“箱”のフロアの中で、瞬は、少しばかり圧倒されたように、落ち着かない視線をあちこちに飛ばしていた。






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