完璧な人生






『好きだ』と言われ、『僕も』と返し、二人の日々が始まった。

それまでアテナの聖闘士たちは、ただくつろいで過ごすにしても、どこかに出掛けるにしても、“みんな”で行動することが多かった。
しかし、氷河と瞬が ご昵懇じっこんの間柄になったことを察した仲間たちは、氷河と瞬に対する認識を自然に、“仲間の一員”から“あの二人”へと移行させ、二人を“二人”として遇するようになった。

その移行は特に大きなトラブルもなく行なわれ、結果として、氷河と瞬は、二人で時間を過ごす機会を多く持つことができるようになったのである。
“みんな”で過ごしている時にも、星矢と紫龍は“あの二人”という意識は保っていてくれたので、二人はいつも二人だった。
複数人の聖闘士たちの合宿所のような城戸邸に起居しているにも関わらず、仲間たちの気遣いのおかげで、氷河と瞬は、二人で出掛けたり、二人だけに通じる視線のやりとりやキスを交わしたりして、二人の時間を楽しむことができたのである。

氷河と瞬の交際開始から3ヶ月。
春という季節に重なったその時期は、至極平和に過ぎていった。

──春が終わると、季節は夏に突入する。






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