「……俺は目を開けてるぞ。見たいところが色々あるから」
「う……うん……」

言った側から、薄く目を開けて、氷河の様子を盗み見る。
彼は、瞬の右足の足首を掴んで、それをベッドの脇に押しやろうとしていた。
氷河は自分の身体を開かせようとしているのだということを理解した途端、頭に血がのぼり、瞬は慌てて再び目を閉じた。

「ひょ……が、あの、僕、すごく恥ずかしい……んだけど……」
「しっかり、目を閉じていればいい」
「う……うん、そうする……」
既に閉じていた瞼を、更にぎゅっと堅く閉じ合わせる。
自分の腹部に触れているのが氷河の舌先らしいことはわかったが、瞬は、恥ずかしくて、その推察が事実か否かを確かめることはできなかった。

「あ……ああっ」
氷河に間断なく与えられる刺激をただ受けとめているだけの状態に耐えかねて、瞬は、脚を閉じようとしたのだが、それは氷河の手に遮られた。
「氷河……僕、あ……あ……っ」
今更に、瞬の脚ががくがくと震え始める。

「ひょ……が、何してるの」
自分で確かめられないことは、氷河に訊くしかない。
瞬は、半ば喘ぎながら、氷河に尋ねた。

氷河に触れられてることはわかっている。
胸、脚、身体の中心、どこにも氷河の感触と熱を感じる。
だが、それが──自分に触れているものが──、氷河の右の手なのか左の手なのか、唇なのか舌先なのか、あるいは全く別の部位なのかが、瞬にはまるでわからなかった。
しかし、触れられていた。

氷河の返事はない。
氷河の唇は、何か他のことをしているらしかった。

自分が何をされているのか──。
羞恥心に邪魔されて実際に見ることはできなくても、その光景は思い描くことができるだろうと思い、瞬はそうしようとしたのだが、瞬には結局、その明確なビジョンを結ぶことはできなかった。
そんなことは不可能なはずなのに、身体中のありとあらゆる部分に同時に触れられ愛撫されているような感覚に、瞬は支配されていた。

「あ……あ……っ!」
それは心地良く、熱く、そして、なぜか、細いピンで表皮を刺されているように痛かった。
初めて自分以外の誰かに触れられることに、瞬の肌が驚いているようだった。

そのうちに、氷河の愛撫が、瞬の内側にまで及びはじめる。
おそらくは瞬の身体を傷付けないために──ゆっくりと用心深く、だが、じわじわと、氷河の愛撫は確実に瞬の内部への侵攻を始めていた。

瞬は、そして、今自分が何をされているのかを考えることをやめた。
考えれば、羞恥と未知の行為への恐怖が増すだけである。
初めてのことなのだから、無我夢中でいいのだと、瞬は思うことにした。






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