氷河王子が我にかえったのは──数えてはいなかったので、それが何度目かはわかりませんでしたが──瞬王子との幾度目かの交合を果たし、瞬王子が弓のように反らせていた背中をぱたんとシーツの上に落とした時でした。

「もう……や……。これ以上したら、僕、壊れちゃう……」
息も絶え絶えに呟く瞬王子に、
「本当に壊れるかどうか、試してみるか?」
なんて、無責任なことを言った氷河王子が、再び瞬王子の身体に愛撫の手を伸ばしかけた時でした。

「あ……あん、ああ……!」
言葉とは裏腹に、瞬王子が、氷河王子の手によって加えられる新しい刺激に、身体を疼かせ始めた時──。

「ん? この部屋は、なぜ暗いんだ?」
ここを先途とあらゆる技を試し尽くした氷河王子は、その時、天啓のように“放置プレイ”という技があったことを思い出し、氷河王子にすがる瞬王子の手を振り払うと、わざとらしくも瞬王子のベッドからおりたのです。
そうして、部屋の窓に歩み寄り、窓の外を眺めた氷河王子は、そこに信じられないものを見てしまったのでした。

信じられないもの──。
それは、夜の色をたたえた広い空でした。
濃紺の空には星が瞬いていました。

100年もの長い時間を耐えたつもりだったのに──氷河王子が耐えていた時間は、実はほんの2時間ほどでしかなかったのです(しかも、そのうちの1時間強は、瞬王子の身体をその気にさせるための行為に費やされていました)。

瞬く星に驚愕している瞬王子が、視線を夜空の下方に移してみると。
何ということでしょう。
瞬王子の寝室の窓の下の庭では、サーチライトを持ったカニ好きの妖精が、今時流行らないVサインを作って、氷河王子を嘲笑っていたのです。
氷河王子が見た白い朝の光は、実は、カニ好きの妖精が瞬王子の部屋の窓に当てたサーチライトの明かりだったのでした。

「は……謀ったな! 貴様!」

氷河がカニ好きの妖精の計略に気付いた時には、もはや手遅れでした。
氷河は、カニ好きの妖精の呪いの通りに──その場にばったりと倒れ伏してしまったのです。






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