「あのなぁ、瞬」 氷河王子は、すっかりメロドラマづいている瞬王子の頬に手を添えて言いました。 「人間は、メシを食わなきゃ死ぬ」 「え?」 「死ぬまで、メシを食い続けるのが人間だ」 「はあ」 「メシは死ぬまで必要なんだ。たった一度、メシを食えたからって、それで俺が満足できるわけがないだろう。そんなこともわからないのか、おまえは!」 それが、とびきりのご馳走だったら、なおのことですよね。 「氷河……でも、僕は……」 「俺は、おまえがいるから、おまえのために、したくもない我慢をして生き続けてきたんだ。俺は、おまえがいないと死ぬんだよ。それくらい、わかれ」 「氷河……」 離れて、他人の目に幸福と映る人生を過ごすよりは、共に苦難に耐えている方がずっといいという確信。 それこそが、真実の愛、永遠の恋、永劫の幸福です。 それは、童話の世界でもメロドラマの世界でも変わりありません。 真実の愛、永遠の恋、永劫の幸福が何なのかを、氷河王子は知っていました。 そして、本当は、瞬王子だってちゃんとわかっていたのです。 ですから、このお話は、ここでおしまい。 もちろん、それから、二人の王子様は、毎日二人でおいしいご飯を食べながら、いつまでもいつまでも幸せに暮らしたんですよ。 めでたしめでたし
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