着替えを済ませ、朝食をとる。
それから、氷河と瞬は二人揃って家を出た。

民間人の居住区内ドームにある家は、高さに制限がある。
建造物の高さに制限が加えられることで横に広がらざるを得なくなった人間の居住区は、長い時間をかけて都市部から郊外へと広がっていった。
現代では、北半球の大都市圏──つまり、主に地球を汚してきた地域──のほとんどが、このドームのシステムを採り入れていて、半世紀前に比べれば、北半球の先進国における人口の過密化・過疎化という問題はかなり緩和されている。
氷河と瞬の暮らしている家も、子供のいない夫婦向け住宅規模のごく一般的な家屋だった。

氷河と瞬が現在籍を置いているのは、グラード財団が母体となって経営している人材派遣会社の一つで、民間のものとしては世界最大規模を誇る総合サービス企業だった。
世界トップクラスの科学者から個人向けサーバントまで、軍事以外のあらゆる分野の人材派遣を請け負っている。
その顧客は国家のこともあれば個人のこともあり、特に災害救助やシークレットポリス系の分野で大きなシェアを占めていた。

氷河と瞬が暮らす家のあるドームから4つ離れた地区──つまり、4つの居住用ドームを  通り抜けた先にある企業用ドームにオフィスがあり、二人はそこに、デートがてら、毎日徒歩で通っていた。

その日は出社すると、ドーム化の成っていないアフリカ内陸部に援助物資を運搬するようにとの緊急指示が出ていた。
数時間前に、該当地域でスコールと言うには激しすぎる豪雨が発生し、その広い範囲が水害による救助法適用地域に指定されたらしい。
最近、地球はご機嫌斜めだった。






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