こういう事態に至った理由を知らされて、その解決策に腐心しながらも、最初の1時間くらい、俺は実はやにさがっていた。 瞬が怖がる“気持ちよさ”の本質を理解せずに。 だが、俺は、他のことならいざ知らず、瞬に関することでだけは馬鹿じゃない。 そして、自惚れられない。 瞬の恐怖の本質に、やがて俺は思い至った。 根本原因は俺の判断ミス──だったろう。 俺の気遣いは、認めたくはないが、紫龍の言う通り、俺の一人よがりだったんだ。 気遣いというものは、相手の性格や価値観をしっかり把握した上で実行しないと、とんでもない結果を生む。 瞬はアンドロメダ座の聖闘士。自分を他者の犠牲にすることを、至極当然のことのように実行してしまえるタイプの人間だ。 俺は、瞬のそういうところに惚れたのに、そのことをすっかり失念していた。 『なんか、あれは氷河じゃないとか、変なことも言ってたなぁ』 確かに、あの夜の俺は、俺じゃなかった。 これ以上ないほど俺らしかったとも言えるが、だが、やはり平生の俺じゃなかった。 俺は多分、もう少し、我儘でいるべきだったんだ。いつもの通りに。 付け焼刃で、自分を優しい人間に思わせようとか、自分を実際以上に良く見せようなんてことを企まずに。 瞬は、俺の性格を知ってるんだから。 俺が、俺のしたいことを俺のしたいようにして満足すれば、瞬は、それを瞬自身の幸福だと感じてくれていたはずだ。 多少痛くても。 俺は、本来我儘な人間だ。 自分のことしか見えない。 自分の好きなものしか大切にしないし、大切と思えない。 瞬は、そんな俺を知っているから、瞬のために自分を曲げている(ように見える)俺を見て、“怖く”なったんだろう。 俺の不自然が。 瞬が俺との××に期待していたのは、自分が気持ち良くなることじゃなく、俺が満足することで瞬もまた満たされることだったろうに。 とにかく、俺が間違っていたんだ。 本当はそんなに大層な人間じゃないのに、お粗末な出来の人間なのに、自分をよく見せるために嘘で自分を飾り立て、しかも、その嘘に“気遣い”という名前を冠して、瞬の前に差し出した。 その上、俺が俺らしく俺だけの快楽を追っていた時には、瞬は瞬の気持ちよさを受け止めることだけで手一杯で、俺もまた瞬と同じように気持ちよかったということにまでは気付けなかったに違いない。 そうして瞬は、俺の奉仕で自分だけが気持ちよくなってしまったという認識を抱くに至り、その性格上、その事実を喜べなかった──わけだ。 多分──瞬のために俺が優しくすることを、瞬に不自然に感じさせまいと思ったら、俺は普段から、そして真実、優しい人間になるしかないんだ。 そうすれば瞬は、その肌以上に敏感な感性で、それを認めてくれるだろう。 ──。 俺は、結局、すべてを一から やり直すことにした。 俺が瞬の中に植えつけてしまった怖れを、俺は消してやらなければならない。 そのためには──真に優しい男になって瞬に優しくしてやるか、今の未熟な俺のまま、俺の好き放題にして、瞬に不自然さを感じさせないようにするしかない。 悩んだ末に、俺は、 |