── 完 ──




カミュのドキュメンタリー映像は、そこで終わった。
その愛と感動のラストシーンは、黄金聖闘士たちによる万雷の拍手をもって迎えられた。

「素晴らしい! 今年の優勝は、文句なしに宝瓶宮のものだ!」
「この3年間、芸もなく氷の棺を作り続けてきて、今年はいよいよ聖域氷河期化の芸でもするのかと危惧していたのですが、とんでもない話でした。我々はあなたを誤解していたようです、カミュ」
「マチュケン聖闘士が登場した時には笑い死ぬかと思ったが、まさかこんな感動シーンがラストに待っていようとは考えてもいなかったぞ」

屈辱の3年間を過ごしてきたカミュの耳に、仲間たちからの賞賛の声が快く響く。
彼は今、得意の絶頂にあった。

「カミュ。本当に素晴らしい作品でした。私、思わず泣いてしまったわ」
本当に涙ぐんでいるアテナから授けられた月桂冠が、カミュの大得意を更に大きなものにする。
実は、カミュは、キンキラキンの着物を用意しただけで、この感動ドキュメンタリーに出演もしていなければ演出もしていなかったのだが、聖域の面々は、その事実に気付いてもいないようだった。

「さーて。闘う意欲も湧いてきたし、今年も1年、頑張るとするか」
カミュが城戸邸の壁に貼りついて盗撮した感動ドキュメンタリーは、聖域の黄金聖闘士たちに、新たなる闘いへの意欲と平和への希望とを運んできたらしい。
アイオリアの言葉に、聖域の黄金聖闘士たちは一様に決意の表情を作って頷いたのだった。



──そんなふうにして、アテナの聖闘士たちは、地上の平和と安寧のため、今日もどこかで道化た闘いを闘っているのである。
人類の心の中に、平和の砦が築かれる日を夢見ながら。






Fin.






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