氷河たちを乗せたジェットヘリは、今まさに離陸したところだった。
ヘリポートに駆けつけた瞬を、機体の作り出す影が、薄墨色に包む。

今ここで仲間たちと離れてしまえば、自分にもたらされるものは彼等との物理的な隔絶だけではない――ということを、瞬は知っていた――予感していた。
それゆえに瞬は、ここでただ遠ざかるヘリの姿を見送っていることはできなかったのである。

「置いていかないで……!」
ほとんど意識すらせずに、瞬は、アンドロメダ座の聖衣ボックスを開けて、その手に彼の聖衣の唯一の武器であるネビュラチェーンを握りしめていた。

瞬の意思を汲んだチェーンが、氷河たちを乗せたジェットヘリに向かって一直線に飛ぶ。
ヘリのスリッドに絡みついたそれは、そして、その驚異的な力で、地上10メートル付近でヘリの上昇を止めてしまったのである。
連夜のご乱行(?)に疲弊していたはずの瞬の小宇宙は、強力を極めていた。

図らずも瞬は、こんな時に、こんなことで、肉体の持つ力と小宇宙の大きさに相関関係は存在しないという事実を見事に証明してのけたのだった。






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