「半年前の――あの子が生まれた時と同じ状態のあの子をなら、もう一度、同じあの子を作れるんだって。沙織さんが、氷河はどうしたいのか聞いてきて……って」

心はどこから生まれ、どこに消えていくのか。

「沙織さんはどう言ってるんだ。あの子が必要なのは沙織さんだろう」
「沙織さんはもう嫌なんだって。もう、あの子の死は見たくないって」
「俺も……また、あれの死を見るのはつらい──おまえの死を見るのはつらい」

愛はどこから生まれ、どこに消えていくのか。

「いつかは見なきゃならないよ。僕はきっと、あの子と同じように氷河を守って死ぬから」
「瞬……」
「僕は地上の平和と人類の幸福を守るために生きていて、そのために闘ってるけど、でも死ぬ時は仲間のために死ぬって決めてるんだ。……でも、そうだね。あの子は僕たちには早すぎる存在だったのかもしれないね」

瞬自身はもう一度シュンを作ることを望んでいたのかもしれなかったが、死んでいったシュンを唯一のシュンだと思っていたい氷河の気持ちもわかっているらしく――それ以上は食い下がらなかった。

「氷河は早く元気にならなくちゃね。氷河が幸せでいることが、あの子のために氷河ができるいちばんいいことだから。氷河が生きている限り、あの子の心は消えないよ」
「俺は死んでも忘れない」
「なら、あの子の心は永遠だね」

もしかしたら、心だけが、そんなふうに永遠の存在なのかもしれない。
氷河は、自分の中に 宝石のような輝きを放ちながら残っているシュンの心を自覚した。
同時に、シュンの心と共に在る幾人もの人の心を思い起こし、そして、瞬の中にある多くの人の心を思った。

瞬の中には、氷河のそれもあるはずである。
だとしたら、生も死も、恐れるほどのものではない。





Fin.






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