僕は僕を探している。
どこから来て、何のために生き、どこへ行くのか――じゃなくて、
僕の半分、僕の半身――でもなくて。

僕は僕の幸福を探している。
それがどんなものなのかはわからない。
あるのかどうかもわからないし、もう手にしているのに気付いていないだけなのかもしれない。
でも、僕は、それをここで探したい。
ここで、みんなと探したい。

「みんなもここで探してるの?」
僕が尋ねると、みんなはそれぞれに――明るくだったり、照れくさそうにだったり――それぞれの微笑を僕に見せてくれた。

悩み傷付いたら手を差し延べてくれる仲間。
僕が手を差し延べずにいられない仲間。
価値観も性格も求めるものも大切なものも、何もかもが違う仲間たち。
似ているのは、誰もが幸福になりたいと願っていることだけ。

「しばらく、寝ていろ」
兄さんが、僕の額に手を置いてそう言った。
その手の温もりに触れた時、僕はわかった。
兄さんは、とっくの昔にこの場所に辿り着いていたから、僕やみんなと離れていても平気だったんだね。
そして、僕がこの旅に出るのがいちばん最後になったのは、僕がこれまでずっと兄さんの手に守られていたからだったんだ。

「はい」
快い幸福感と、間違えずにこの場所に辿り着いた安堵感が、僕に眠りを運んでくる。
僕は、もう一度僕の仲間たちの姿を確かめるように見詰めてから、ゆっくりと瞼を閉じた。
僕の幸せを探す手始めに、目が覚めたら氷河に好きだと言ってみようと思いながら。





Fin.






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