氷河は国中の飢えた民を救うために、お城にあった宝石や金貨を大放出しました。
瞬がそれを望んでいましたし、愛と信頼を取り戻した氷河は、とても気前がよくなっていたのです。
氷河自身がそのことに気付いていたかどうかはわかりませんけれど、彼は、そうすることで彼の持っている愛と信頼を人々に大盤振る舞いしたのでした。

公爵家の財産は無限ではなくなったので、あんなにたくさんあった宝石や金貨は徐々に減っていきました。
広いお城は、掃除をしないとすぐに埃だらけになってしまいますし、おなかが空いたら食事の支度もしなければなりません。
でも、瞬は働くことが好きでしたからね。
すべきことを見付けられず、広いお城でぼんやりしていた頃に比べれば、毎日がとても楽しかったのです(もちろん、二人で過ごす夜も楽しかったですよ)。

氷河は、お城の維持のために、領内から小間使いや庭師も雇い入れました。
この国を飢えから救った公爵の許で働くことを光栄に思う人間はたくさんいましたので、お城はやがて、氷河が呪いをかけられる以前の活気を取り戻すことになったのです。

もう呪われた城ではなくなったお城で、氷河と瞬は、愛し合い、信じ合い、生涯を幸福に過ごしました。

カーサ国王は、そのうち誰からも国王と認めてもらえなくなって、いつのまにかどこかにいなくなってしまったそうです。






Fin.






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