たとえ どれだけ深く強く傷付くことになっても生きていてほしい――自分と共に。
瞬にそういう存在の仕方を望むのは我儘なのかもしれない――と、氷河は思わないでもなかった。
エリスの言う通り、自分もあの瞬のようにこの城で彼女のコレクションの一つになってしまえば、癒されない過去に傷付くこともなく、本当は大切に思っている相手を傷付けることもせずに済むのかもしれない――とも思う。

それでも氷河は、そんな考えをすぐに振り払った。
この氷の棺のような城の中で穏やかに、互いを傷つけ合うことなく存在すること。
それは、つまり、瞬と触れ合えないということなのなのだ。
“傷付かない”“傷付け合わない”とは、そういうこと。
そして、そんな穏やかさがもたらすものは、結局は、孤独という無限の苦しみだということを、氷河は知っていた。






【next】