「なんて無茶なことを。いくらあなたでも黄金聖闘士が何人もいるところに一人で乗り込んでいくなんて――」 その強大な力にも関わらず、いつも人より一歩下がった場所に立つことを常としていたアンドロメダ座の聖闘士の大胆には、アテナだけでなく彼の仲間たちも驚き呆れ果てていた。 「恋に夢中になっている者が、まともな戦い方をするはずがないでしょう」 シュンが、少しばかり気恥ずかしそうに、だがきっぱりとした口調で言い切る。 「おそらくアテナの小宇宙に触れたら、皆すぐに理解します。あなたが誰なのか、彼等はきっとすぐにわかる」 そう言ってから、シュンは、彼の隣りに立っている白鳥座の聖闘士を横目でちらりと見あげた。 聖域からの面会の申し出を、アテナに伝える役目を任されたのはヒョウガだった。 アテナの村にある仮ごしらえのアテナの御座所で、シュンのアテナに対峙したヒョウガは、平生の強引さや後先を見ない無謀はどこへやら、先程から彼らしくない極めて神妙な態度を保ち続けていた。 彼とて仮にもアテナの聖闘士、これまで自分たちが拒絶していた少女が何者なのかをすぐに悟り、まともに口のきける状態ではなかったのだ。 ともあれ、シュンのシュンらしくない無謀によって、2年間の時間を費やしたアテナと聖域の対立は消滅し、両者の和解と融合はついに成ったのである。 アテナと教皇が直接会うと、すべての事柄は迅速に進展した。 聖域にアテナが立ち、アテナのもとに聖闘士たちが集う日。 その日を迎えることができた感激に我を忘れたらしい教皇は、アテナの傍らにアンドロメダ座の聖闘士の姿を認めると、上擦った声でシュンに告げた。 「聖域の青銅聖闘士の一人や二人、そなたにくれてやる。自らがアテナの身の代なのだと思えば、キグナスもその役目を光栄としか思わぬだろう。好きに使いたまえ」 「教皇のお情け深いご配慮に心から感謝いたします」 もちろんシュンは、聖域からの贈り物を、ありがたく その胸に押し頂いたのである。 Fin.
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