隠しようもないことだったせいもあるだろう。
翌日 星矢が説明を求めると、瞬は、見ている方が恥ずかしくなるほど恥ずかしそうな様子で、そういうコトに至った彼の心理を仲間たちに語ってくれたのである。

「星がたくさん輝いてて――。人って、ほら、星を見るとね、命のことを考えるようにできてるの。人間よりずっと長い星の命とか、星よりずっと人間の短い命とか。そうしたら、なんだか急に命を抱きしめて、その価値を確かめたくなって、そう思ったら、そこに僕にとってとっても大事な命があって――僕は、氷河を抱きしめたくてたまらなくなったんだ……」
「北極星が見えたんだ。天の変わらぬ指標がだな、地上での俺の命の指標は瞬なんだから、誰かに奪われる前にさっさと自分のものにしてしまえと言っているような気がした」

「……」
恋愛経験のない星矢には、正直なところ、瞬と氷河の言うことの意味が全く理解できなかったのである。
結局、もともと好き合っていた者たちが、(魔鈴曰く)完璧に演出された恋人たちのためのシチュエーションの中に立たされてムードが盛り上がり、互いの気持ちに感応し合っただけのような気がしてならない。
どれほど美しい言葉で言い繕うと、要するに、あの山の頂で互いの気持ちを感じ取った二人は、やりたい気持ち一杯で あの丘を下っていったのだ。

所詮、恋し合う二人の気持ちなど、第三者には理解できず、操作もできない。
二人の心を動かすことができるのは、ただ二人だけ。二人の心を理解できるのも、ただ二人だけなのだ。
思惑通りに氷河と瞬はくっついて・・・・・くれたというのに、なぜか星矢は己れの無力感に打ちのめされてしまっていたのである。


――どんな願い事も必ず叶う場所。
おそらく、そんな場所は、この地上のどこにも存在しない。
それはただ人の心の内にのみ在り、叶えたい願いを実現とようとしたら、人は己れの心を世界に向かって開示するしかないのだ。
その心を美しいと感じた者が、きっと同じ心を彼に見せてくれるに違いない。






Fin.






【menu】