どういう方法によってなのかは知らないが、氷河に寝かしつけられたはずの瞬が、午後のまどろみから目覚めて、仲間たちの前に姿を現したのは、それから30分ほどが経ってからのことだった。 星矢に性交現場を覗き見られたことに気付いている様子はない。 氷河もその事実を瞬に知らせるつもりはないらしく、その点に関しては、星矢は気を安んじることになった。 既に部外者が心配する必要のないことはわかっていたのだが、最後の小さな懸念を振り払うために、星矢は瞬に尋ねてみたのである。 「おまえ、氷河に自分の顔が嫌いって言われて平気なのか」 ――と。 「それは……仕方ないよね。氷河が嫌いだっていうものを、無理に好きになれなんて言うことはできないもの。『僕の顔を好きになって』って言って、それで好きになってもらえるものなら、何度でも毎日でも僕はそう言い続けると思うけど、それは下手をすると逆効果になりかねないことだし」 氷河のフォローは完璧らしい。 表向きは残念そうな口調をしていたが、瞬の瞳には全く落ち込んだ色がなかった。 本当に阿呆で無駄な心配をしたものだと、星矢は今更ながらに自らの軽挙を大いに反省したのである。 「ま、人間 顔じゃないしな」 「うん。大事なのは顔なんかじゃないよ」 瞬が明るい目をして仲間に賛意を示し、星矢もまた、そんな瞬に頷き返した。 そんなふうに心配事が完全に払拭されたところで、星矢の中には ふと一つの疑問が生まれてきたのである。 その疑問を、星矢は気軽に口にした。 「ところで、おまえ、氷河の顔は好きか?」 「え? もちろん、大嫌いだよ。あんな綺麗な顔、今すぐにでも この世から消えてなくなればいいのに」 瞬がにっこり笑って、きっぱりと断言する。 氷河は、彼の Fin.
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